「ビジョナリー・カンパニー」から考えるキャリア

はじめに

今回はジム・コリンズ著「ビジョナリー・カンパニー」の感想を記してほしいという依頼をいただいたので、個人的な感想を書きました。
本の内容には触れず、あくまで「ビジョナリー・カンパニー」を読んでどんなことを考えたかということに絞ってお示しします。

  1. ビジョナリーとは何か?
  2. キャリア論
  3. まとめ

ビジョナリーとは何か?

ビジョナリーは「未来志向」を意味します。この本を読む上でキーワードであることは間違いないでしょう。
そうすると、未来とは何かを検討していく必要があります。

この点、カナダの精神科医であるエリック・バーン氏の言葉がヒントになります。

“You cannot change others or the past.
You can change yourself and the future.”
ー 過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる。ー

エリック・バーン氏の言葉からは、未来とは変えられるものであるということがわかりますが、
私が重要だと思うのは「未来と自分(あなた自身)が並列」で示されているという点です。

他方、ビジョナリー・カンパニーの中では数多くの有名企業の事例が紹介されていますが、
時代が変わっても「根源的な企業の価値観」は変わらずにいたという点が特徴としてあげられます。

根源的な価値観を持つ一方で、時代や状況に応じてうまく変化して行動に移していくということこそが、
不確実性が高まった現代社会で生き残るための重要な考え方であり、それこそが未来志向といえるでしょう。

キャリア論

「ビジョナリー・カンパニー」自体は優れた企業について論じられていますが、
私は個人のキャリアに照らし合わせてキャリアを検討していきます。
ここでは、キャリアプランニングにおける2つの代表的な考え方をご紹介します。

バックキャスティング型のキャリアプランニング

バックキャスティングとは、未来における目標を設定し、現状とのギャップをどう埋めていくかというアプローチ方法ですが、
キャリアプランを検討する際にこのアプローチはもはや現代では通用しないようです。

たとえば、今から5年後10年後にどうなっていたいか、そのために現状と比較してどのように目標に向かっていくかということを計画したとしても、
昨今のコロナ禍のように予期せぬ出来事が発生した場合にそのプランは変更を余儀なくされるあるいは断念せざるを得ないということもあるかもしれません。

プランド・ハプンスタンス・セオリー

不確実性が高まっている現代社会において、どのようなキャリアを歩むかということを検討する際、
「プランド・ハプンスタンス・セオリー」を参考にしようと思います。

「プランド・ハプンスタンス・セオリー(=計画された偶然性の理論)」とは、
スタンフォード大学のジョン・クランボルツ博士が提唱した理論で、

  1. 予想していなかった出来事がキャリアに影響を与える
  2. 偶然の出来事が発生したとき、あなたの行動や努力で新たなキャリアにつながる
  3. 主体的に行動することでチャンスが増える

望むキャリアを手にするためのプロセスをこのように示しました。
そして、そのキャリアを手にするための行動として、

  • 好奇心=新しいことや未知の分野に興味を持つ
  • 持続性=失敗してもあきらめずに続ける
  • 楽観性=どんなことでも前向きに考える
  • 柔軟性=臨機応変に物事に取り組む
  • 冒険心=積極的に挑戦する

という5つの特性を指標としています。
これらの特性に基づく行動をつづけた結果、
自分自身の望むキャリアを手にすることができる。そのチャンスを得ることができると理論です。

まとめ

「ビジョナリー・カンパニー」が示す優れた企業のポイントは、
不確実性の高い現代社会における個人のキャリア形成の参考になるでしょう。

“Life was like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.”
ー人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまで何が入っているかわからない。ー

これは、1994年公開、トム・ハンクス主演の「フォレスト・ガンプ」の劇中で、
主人公の母が亡くなる直前に主人公へ送った言葉です。

不変の価値観を持ちつつ、置かれた状況や自分ができることにひたむきに取り組んでいると、
当初予想もしていなかったような成果を得ているということ。
今取り組んでいることが、将来どうつながっていくかはわからなくても、確実に何かの成果につながるのである。
そういうメッセージをこの映画から感じることができます。

「このままでいいのだろうか」、「今やっている仕事はやりたいことではない」など、
社会人として働いている中での悩みは尽きません。しかし、自分が何を大切にしているのか、
強みは何かということを自分自身が理解すること。そして、それを踏まえて今取り組んでいることで
成果を出すことにひとまず集中することで、チャンスは必ずやってくるというとても“ビジョナリー”な物語です。

プランド・ハプンスタンス・セオリーに示された5つの特性を踏まえた行動と、不変の価値観を持つこと。
この2点が個人のキャリアでも企業成長でもポイントになってくるでしょう。
私も自分の持つ「チョコレートの箱」には何が入っているのか、毎日を楽しみに生きていきたいと思います。

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